友人の1人に【ミラクル】を連発する男がいる。
ミラクルといってもなんの自慢にもならない、くだらない出来事しかない。
ついこの間も毛布を4つ折りにし、1ヶ月程枕替りに使用していたらしいのだが、さすがに暑くもなってきたので、洗濯しようと毛布を広げると、中から全く身に覚えのない男性用ブリーフが出て来たらしい。
無駄にミラクル
彼の推理ではマンション内にある、コインランドリーで毛布を洗濯した時に、毛布と一緒に誰かの取り忘れのブリーフも持って帰って来てしまったのではないかと真面目に語っていた。
コインランドリーから持って帰って来たまでは有り得る話だが、毛布を4つ折りにする際に普通は気付くだろうと彼に問い掛けた。
彼は言う
「それに気付かなかった所がミラクルですねぇ」
と眉間にシワを寄せ、アゴ髭を擦りながら、目の前にあるホットコーヒーに口を浸けた。
何故こんな話のあとに良い格好をつける事が出来るのか俺にはわからない。
彼が再度口を開く。
「うちのマンションは中国人が多いみたいなのであのブリーフは中国人のオッサンのやつでしょう」
彼の中で中国人=ブリーフという方程式が定着しているようだ。
しかしよく考えてみると1ヶ月もの間、どこの誰かもしれない人のブリーフを枕にして寝ていたという事実は軽くはない。
普通ならそこそこショッキングな出来事だと思うのだが、そんな話はどこかにやり
「今週発売のプレイボーイが手に入らないんですよねぇ」
と嘆いていた。
昔、どこかで聞いた事がある。
『本当のプレイボーイはプレイボーイを読まない』
俺はそんな事を思い出しながら、アゴ髭を擦り、目の前のホットコーヒーに口を浸けた。
彼が渇望しているプレイボーイには、前田敦子の特大ポスターが付いている事を、俺は知っている。